ピルの安全性について
低用量ピルは、世界中で服用されている、安全性の確認された経口避妊薬です。
ただ日本では、避妊に対する道徳的・文化的な側面からの抵抗も強く、なかなか避妊薬としての承認がおりず、1999年にようやく認可されました。
それまでは病気治療として、ホルモン量が高用量・中用量のピルしか使えなかったため、副作用も強くでる結果となり、その頃の情報が未だに根強く残っています。
また、女性の積極的な活躍を妨げるかのような啓蒙活動が、低用量ピルの認可に反対する立場から繰り広げられいた弊害や、古い考え方や価値観での倫理の押し付けによる不安感をあおるような口コミなども、都市伝説のように根拠のない噂として定着しています。
勿論、有効成分を含む効果効能のある薬剤ですから、メリットもあればデメリットもあります。
「薬と毒は紙一重」とも言うように、効果があるからこそ副作用リスクも存在するのです。
風邪薬や鎮痛剤、抗生物質、胃腸薬、どのような薬にも、絶対安全でデメリットの全くない薬は存在しません。
誰にでも絶対に安全な薬とは、全く効果もなにも無い薬(つまりは偽薬であり、プラセボ)ということにもなるのです。
従来の高用量・中用量ピルは分有されるホルモン量も多く、血栓症などの副作用が確認されていました。
そのため医療現場では、患者さんの治療にも積極的には使いにくく、病気の状況とリスクの兼ね合いが難しい状況がありました。
ホルモンにより排卵を止めて避妊する本来の目的を損なわず、副作用だけを軽減するために開発されたのが低用量ピルです。
以前より大幅に副作用リスクが軽減し、安全性も高くなった低用量ピルですが、どんな人でも大丈夫というわけではありません。
ホルモン量の少ない低用量ピルでも、「服用してはいけない人」「服用に注意が必要なケース」はあります。
特に血栓症の発症するリスクは減ったとはいえ、完全に無くなったわけではありません。
血栓症とピルの関係
血栓症とは、血液が固まって詰まる症状で、血液ドロドロ系タイプの人に発生しやすい病気です。
ニュースで耳にする「エコノミークラス症候群」なども、狭い空間で長時間動かないでいた場合、水分不足で血液が固まりやすくなって発生する血栓症のひとつです。
血管の場所や血栓が詰まる部位によって、命に関わるようなケースもあります。
危険因子として血栓症や血管障害の既往歴のある人、35歳以上で1日15本以上喫煙者は服用すべきではありません。
高血圧、糖尿病などの代謝性疾患、40歳以上の高年齢者やリューマチ性心疾患などの人も要注意です。
肥満や極端に痩せている人、家族に血栓症を起こした人のいる方なども、注意が必要となります。
低用量ピルは「妊娠すると排卵が止まる」という女性の身体の自然の摂理を利用して、ホルモンで疑似妊娠状態として排卵を抑制する経口避妊薬です。
日本では副作用など含めさまざまな検討のうえで、ようやく1999年に低用量ピルが認可されました。
世界の流れからはずいぶんと遅れてしまいしたが、そのぶん日本女性は安全性の高いピルを使用できるともいえるのかもしれません。
低用量ピルの避妊効果を得るための仕組みや、その作用による影響、効果、そしてリスクも含めて、正しい情報を学んでほしいと思います。