低用量ピルの避妊以外の効果
低用量ピルを服用すると、避妊以外にさまざまな副次的な効果があります。
その効果は、大きく分けると、①生理に関する効果、②安定したホルモン供給による効果、③長期服用による効果、④骨盤内感染症の予防、の4つがあります。
生理に関するトラブルを軽減する効果は非常に大切で、この効果のために低用量ピルを服用する女性は多いですね。
低用量ピルを服用していると、生理不順・生理痛(月経困難症)・月経前症候群(PMS)など、月経に関するトラブルが大幅に改善します。
月経に関するトラブルが改善するのは、ピルの服用によって排卵が休止し、毎月作り直される子宮内膜の厚みが薄くなるからです。
つまり、生理が軽くなることでさまざまなトラブルも軽減するのです。
経血の量が減ることも生理のときのわずらわしさを軽減します。
生理痛は、子宮内膜をはがすために子宮の収縮させるプロスタグランジンという物質によって引き起こされます。
ピルを服用して排卵が休止し、子宮内膜の形成が薄くなると、プロスタグランジンの分泌が減って生理痛が軽減します。
女性ホルモンの配合量がもっとも少ない「ヤスミン」などの第4世代の低用量ピルは、生理に関するトラブルをなくすることを主目的に服用されることがあります。
低用量ピルを復唱することで安定したホルモン供給による効果は以下のような改善をもたらします。
毎日ピルを服用することで卵胞ホルモンと黄体ホルモンが安定して供給され、以下のなどの効果があります。
- 肌の色つやが良くなる
- 脱毛がへり毛髪が豊かになる
- ニキビ、吹き出物の改善
- 閉経を遅くする(卵巣を休めて寿命を延ばす)
- 閉経後の骨粗鬆症を予防する
飲みはじめにニキビができやすくなることがありますが、飲み慣れるとむしろニキビや吹き出物などの肌トラブルが少なくなります。
乾燥肌の人もピルの服用によって改善します。
卵胞ホルモン(エストロゲン)は生理や妊娠に関わるだけでなく、髪の寿命を延ばす、肌のコラーゲンを増やすなどの働きをしています。
ピルを服用してエストロゲンを安定して供給することで、女性らしい美しさを保つことが期待できます。
女性は閉経後に骨量が急激に減少しますが、ピルを服用してエストロゲンを供給すると閉経前に骨量を蓄える効果があります。
その貯金によって将来の骨粗鬆症を予防することができます。
ピルの長期服用による効果もあります。
長期間低用量ピルを服用することで、卵巣がん、子宮体がんのリスクが低減します。
卵巣がんになるリスクは、ピルを5年間服用すると3割減、10年間で4割減、15年間で5割減になると言われています。
これは、これまで21カ国で行なわれた45の研究結果を総合した論文(2008年)の結論です。
子宮体がんになるリスクは、3年以上服用すると5割減、10年以上服用すると8割減になり、この効果はピルの服用をやめてからも20年以上続くと言われています。
低用量ピルの服用で骨盤内感染症を予防する効果も期待できます。
ピルの服用で性感染症を防ぐことはできませんが、ある意味で重症化を防ぐことができます。
性器クラミジア、淋病などが怖いのは、菌が子宮から輸卵管などの骨盤内臓器に侵入すると不妊症になることです。
ピルを服用していると子宮頸管の粘液が変化して精子が通過しにくくなります。
これは避妊効果ですが、精子と同時に性病の菌も侵入しにくくなります。
ピルの副次的効果について
●低用量ピルの本来の効果
低用量ピルは、そもそも「経口避妊薬」として開発されました。
しかし、近代になって開発された医薬品の中には、当初の開発目的とは異なる目的に対して有効であると判断され、その別の目的のための成分として用いられたという経緯を持つ薬も有るのです。
低用量ピルもその一つであり、しかも様々な副次的効果が認められている薬でも有るのです。
その副次的な効果は、女性であれば知って損はない、むしろ知らなければ大きく損をする可能性すら有るのです。
●低用量ピルが副次的効果を持つ理由
低用量ピルが、本来の目的である避妊以外にも効果を及ぼす理由は、その成分である「女性ホルモン」が関係しています。
低用量ピルは女性の体内のホルモンバランスを変化させることで、体に「妊娠している」と錯覚させ、排卵を抑制することで避妊を行うのです。
この「ホルモンバランスの変化」こそが、低用量ピルの副次的効果の源なのです。
●効果①「月経のトラブルに関する効果」
女性であれば誰もが経験する「月経」ですが、その際には様々な体調の変化を伴うことになります。
中には、日常生活に大きく支障をきたす可能性すらあり、生活の何時を大幅に下げることになります。
低用量ピルの持つ擬似妊娠効果によって経血量が減少し、重い生理痛の症状を緩和することが出来ます。
また、いわゆる「PMS（月経前症候群）」にも効果的であり、イライラなどの症状を緩和することが可能です。
●効果②「ニキビや吹き出物の予防」
避妊薬を服用することで、美容にも効果があるというのは、どうにも眉唾のように聞こえてしまいますが、実際に低用量ピルには美容に関する効果が認められています。
ホルモンバランスが安定することで、ニキビや吹き出物といった美容の大敵を予防する効果が有るのです。
その他にも、肌にツヤとハリをもたらし、乾燥肌を防止する効果もあります。
男性ホルモンの影響によってムダ毛が多く見られていた女性も、ホルモンバランスの改善によってその症状が改善されることでしょう。
●効果③「更年期障害の改善」
年齢を重ねた女性が発症する諸症状である「更年期障害」についても、低用量ピルで改善することが可能なのです。
そもそもに更年期障害は閉経に伴う女性ホルモンの減少が原因として起こるため、低用量ピルに含まれる女性ホルモンで不足分を補うことが出来ることから更年期障害の症状を改善することが出来るというわけです。
更年期障害は様々な症状を呈するため、対症療法ではきりがなく、根治療法に近い方法として低用量ピルが活躍してくれるのです。
●効果④「骨粗しょう症や卵巣がんの予防」
上記の病気や症状の他にも、女性ホルモンの減少を原因とする様々な病気、症状についても低用量ピルで予防や改善が見込まれます。
具体的な例としては「骨粗しょう症」や「卵巣がん」が挙げられます。
●低用量ピルと日本での立ち位置
実は、欧米では低用量ピルはドラッグストアで購入できる薬なのです。
日本では医師の処方がなければ入手できないため、どうしてもその使用にはハードルがつきまとってしまいます。
その理由については別の機会で解説するにしても、健康上で様々なメリットを持つ低用量ピルは、日本でももっと身近な存在となるべき薬であると言えるでしょう。
